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新宿鮫

ここ数年、生活の変化が大きく

肉体的にも精神的にも疲れる状況が続いていたせいか

とんと、そういった時間を持つことが少なくなったが

結構、私は読書、小説を読むことが好きである。
その中でも

今でも最新作が出ることを心待ちにしているのが

「新宿鮫」

大沢在昌のまさに代表作シリーズだ。

知ってる人はよく知っている人気シリーズだから

ミーハーと思う人もいるかもしれないが

それでも私は好きなのだ。



長編としては第11作まで発刊されている(2014年4月現在)。

シリーズ物は

第1作目が一番面白くて、2作目から次第に質が落ちていく、

などと言われることが多いのだが

私は、むしろ1作目よりも、その後の作品を

繰り返し読んでいる。

いずれも、様々な試みの描き方がされていて

人によっては、意見が分かれる作品もあるが

数年おきに新作が出されて

多くの読者を獲得しているのは、ちゃんと理由がある。


まずは、

主人公である「鮫島」という刑事の人物像。


国家公務員採用I種試験合格という、エリートを約束されたはずのキャリアでありながら

怒涛の警察官人生を歩む羽目に陥ることとなり

それでも、警察官としての誇りと信念を持ち続け

決して斜に構えたり、自棄になったりせず

黙々と単独捜査を続ける姿は

プロの職業人を思わせる。

そして

犯罪者には厳しいが、

高い教養と知性に裏打ちされた真摯、かつ礼儀正しさも持ち合わせている。

検挙率トップ、ヤクザからも恐れられる存在であることを

決してひけらかすこともなく、他人の意見に耳を傾けることのできる

度量の大きさも持ち合わせた大人の男。


・・・なんか、ここまで書くと

あまりにできすぎたヒーローで、嫌みったらしいが

それは、私に文章が下手なせいだと思ってほしい。


そして、主人公だけではなく

鮫島以外の多くの脇役達の人物像の描き方が

実に深い。

警察組織における、鮫島の唯一の理解者である桃井課長、鮫島の恋人である青木晶はもちろん、

ほんの少しだけのチョイ役と言えるような脇役でも

かなり気を配り、それなりのバックボーンを設定していることを伺わせる。

変な言い方だが、どの脇役も説得力のある動き方をしているのだ。


また、各作品それぞれに、違ったテイストを持ちながら

警察組織内部、暴力団、犯罪のみならず、医学、風俗にいたるまで

その描写はリアル、かつ詳細で

大沢在昌の取材能力は

山崎豊子にも決して引けをとらないと、私は思っている。


「新宿鮫」を未読の人で

もし興味が持ってもらえたのなら

私個人としての評価はあまり高くないが

吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞を受賞している一作目「新宿鮫」を読んで

二作目「毒猿」に進めてほしい。

「毒猿」はクライマックスでは相当にハードな内容となるうえに、

鮫島はどちらかと言えば、脇にまわった感のある作品だが

彼の正義感の強さ、誠実さを感じ取ることができる。

そして、血を血で洗うような暴力と抗争の中に

人と人が織りなすコミュニケーションの脆さ、切なさ、いとしさ、そして怖さが融合されている。


その面白さを感じ取ることができたら、

容易に3作目「屍蘭」、

そして、直木賞受賞作「無間人形」まで読み進めることができると思う。


シリーズ物は面倒くさい、と考えてしまうのも

よく理解できるが

読むたびに、次の作品が待ち遠しくなるのは

多くの読者の存在が証明している。



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